Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル・番外編

    春疾風鬼重来(はるはやて おにのちょうらい)
 



          




 思えば、近隣に栄えし大陸や半島と比しても、あまりに小さな島国だというに。そこには大陸に負けぬほどもの人文の歴史が悠々と育まれ。嵐に洗われ、大地の怒りに揺さぶられても、人々は自然の恵みと慈愛に守られ続けた、緑豊かで、水清き、それはそれは美しい瑞穂の国。それが此処、日之本の国・倭
やまと。春には萌緋、夏には新緑、秋には紅錦、冬には雪白。様々に表情豊かな四季が巡る国だからこそ、その季節が入れ替わる境目の時期には、異なる気候のぶつかり合い、嵐や雷で天候が荒れる。春には春の颯はやてがあって、春一番の突風が吹いた前後には、ちょっとした嵐のような大風が来る。うろろ・るろろと唸りつつ、驟雨を率いてそこいらを席巻し、春の暁を、桜の緋を、なお鮮やかになれと洗ってゆくかの如くに蹂躙してゆく、新参者にしては ちと無粋で乱暴な、春の颯嵐がもうすぐの間近と迫っていそうな、それはそんな頃合いのことだった。






            ◇



 うぐいすの初音もいつのことやら。朝寝に優しき小鳥のさえずりが耳にはお馴染みの声となり、暁に明るむ時間帯が日に日に早まる、季節は春。冷たい井戸のお水でお顔を洗い、愛らしくもさっぱりとした衣紋で身支度を整え、賄いのおばさんたちが闊達に働く納戸へと顔を出し、ご挨拶がてら“何か御用はありませんか?”と声をかけるのが日課の書生くん。ありがとね、でも今日はいいよとお声を返され、それではと向かうのが、母屋の奥向きの大広間。冬枯れの庭に間口を向けたる古ぼけた外観は、だが何年も手を入れてないにしては頑健なもので。思い出したように雨漏りがすることもなくはないけれど、築何十年とも言われているほどの古家にしては丈夫で強かで。
“住んでる人の人性が映るものなのだろうか。”
 仮にも自分のお師匠様だというのに ついついそんな風に感じてしまうほどに、そこで寝起きする人は、成程、気心も態度も、ついでに腕脚・手足も頑丈で俊敏でお強いったらありゃしないから。もしかしたなら、その気概が内から支えているのかも? 今帝が直々の推挙によって取り立てられし、例外中の例外な上達部。敵ばかりが多い、うら若き陰陽師。名前もまた毒々しき、蛭魔妖一というのが、このあばら家屋敷の主人のことで。年の頃はまだ二十になるかならぬかの、瑞々しき若さをたたえし美貌の若衆。一見したところは、まるで春の朝霞の中に立つ精霊のような佇まい。この国のこの時代にはあり得ない、金色の髪に金茶の眸。どこの深窓の姫にも例がなかろう、深みのある練絹のような白磁の肌に包まれしは、細おもての嫋やかな面差し。あのくらいの年齢の男子ともなれば、そろそろ一端の公家・公達ならば何につけ落ち着かれ、とっぷりと恰幅のいい重々しきお体になられて貫禄を蓄えなさる頃合いなのに。こちらのお館様におかれては、若木のように撓やかにしてすらりと伸びやかな肢体のまま、肩や腰の細さがともすれば罪なほどにも艶香を放ち。しかもそんな風貌であらせられるのが、微塵も狡猾にも浅ましくは映らない不思議。痩せぎすの殿御といえば、当世では抜け目なくも浅はかな、落ち着きのないキツネめと、謗
そしられ軽んじられ、笑われもしかねぬものが。そんな印象なぞどこにも滲まず、むしろただただ余裕綽々。清冽なまでに冴え返る、鋭くも強靭で強かな男ぶりは、まだ少しは青き匂いのその中へ、この世の者とは思われぬ妖冶な雰囲気をまとっておいでであるものだから。そこへ…趣味のいい衣紋を羽織り、品のいい所作に添ったる意味深な笑みや目配せと来ては、世の女性たちが黙って放ってはおかず。たまに殿上へと上がられし出仕の日は、他の部署も出仕率がど〜んと跳ね上がり、その割には…女官たちの手元が随分とおろそかになると、専らの評判の貴公子で。しかもしかも、これは知る人の限られるお話ながら、その専門たる陰陽・咒術を駆使しての、邪妖退治や妖魔封殺には、当代随一の実力を発揮してもおり。当世の帝が、そして東宮様が、素性の怪しい彼を、だというのに殊の外に重用なさるのも道理というものと、その筋の者たちも悔しいと歯咬みしながらも重々納得しているらしいとか。そんな具合いで、素晴らしいやら恐ろしいやら、虚実様々な噂に取り巻かれしお館様ご本人はといえば、瀬那が見るからには、

  “ちょっと怖いけれど優しい方、ですようvv”

 だって、小さなセナへそれはよく構って下さるし。誰が相手でもどんな場であれ、臆しもせぬままに論舌巧みに立つ人なその上、勘気が強くてすぐに手や足が出る人でもあるけれど。つれなく素っ気ないとの評の割に、セナのこと、髪を撫でたり もしゃもしゃしたり、おでことおでこをくっつけて笑って下さったりと、まるで子供同士みたいな構い立てをして下さるから。畏れ多いながら、まるでお兄様のようにお慕いしているセナくんだったりするし。それが可愛がられている彼だけの独りよがりではない証拠、東宮様や博士の高見様、神祗官として名高い武者小路の跡取り様など、お館様の人柄をも買っておいでの、しかも立派な方も多少はおいでで、そんな中の最上級といえば…。
「…あ。」
 ほてほてと回り廻廊を進んで来て最初に目についた人影へ、自然とセナのお顔がパッとほころぶ。大柄な背中を朝の陽射しで暖めて、緑の葉っぱもつややかな、とある木立ちの前にて立っておいでのその方こそは、
「葉柱さん。」
「よお、おはようさん。」
 小さな書生くんがそれは懐いている、お館様直属の…ちょっぴり恐持ての侍従殿。上背があって屈強精悍な、そりゃあ逞しくも男らしい御方で。黒装束が多いことから、殿上の女官たちからは“黒の侍従”などとも呼ばれている彼こそは。実は姿に反して人にはあらず。蜥蜴一門の総帥格、葉柱の名を継ぐ惣領様、手っ取り早い話、それはそれは妖力の高い、立派な(?)邪妖なのだとか。だってのに、それを退治し封印するお役目の、神祗官補佐であるお館様に仕えておいでなのは、諸事情あっての誓約を結ばれたから。闇の眷属、陰体の中には、苦手なはずの陽の咒への抵抗が強い者もいなくはなくて。大地の気脈を用いる陽の咒とちがい、陰の咒は負の力。陰体である自分自身で蓄えし精気や、闇の眷属たちが仕えし“虚無”から生気を分けられて用いられることが多く、後者の場合は無尽蔵な上に威力も甚大。格が高い相手だと、陽咒なぞ易々と相殺して余りあるほどもの攻撃を放ってもくるので、そうなるとこっちはお手上げ。そこでそんな輩にこそ強力に効く、陰の障壁を侵食してものともしない種類の“陰咒”に、こちらも通じていなくてはならないが、生身の人間には道理的に不可能なこと。そこで、それを扱うことが出来る陰体を捕獲・懐柔し、手先・下僕として使うのが陰陽の中でも殊更に高度な“式神”術であり。そんな契約の下に、この屋敷にも出入りをし、あの気性の難しいお館様へと使われておいでの葉柱さんであるそうなのだが、

  “…ただそれだけ、じゃあないですものねvv

 ずんと前に漏れ聞いたお話。そのお付き合いの最初こそ、お館様が葉柱さんの窮地に付け込むようにして接近し、一門の難儀を救うその代わり、生涯、自分の手助けをせよとの誓約を結ばれたのだそうだけど。使い捨ての駒にしては何かと構うその揚げ句、駒なら見捨てれば良かったような危地にあった葉柱さんを、お館様は自分の身の危険も顧みず、再び助けて差し上げもしたそうで。それからはお互いに、苛烈なまでに罵り合うこともありながら、なのに…人と人とのお付き合いでもこうまで深いものは今時なかろうほどに、互いを信頼い合っておいでの頼もしき間柄。丁度 セナが大好きな進さんへと甘えるのに似たような、ちょっぴり甘やかな眼差しで、この総帥様を見やることも少なくはないお館様なので。日に何度か、丁々発止と繰り広げられてる激しい喧嘩も、彼らには歌詠みや手遊びのようなもの。胸を傷めてまで 気に病むことはないらしいと、やっと最近慣れて来た書生くんであり、
「どうされましたか?」
 その大きな肩が何だか考え事でもしているかのような、そんな堅さを乗っけていたので、ひょいと気安く訊いてみると、
「うん。こんなところに椿なんてあったかなと思ってな。」
 寝起きでおいでなのか、直毛の漆黒の髪も少し乱れたままならば、深色のあっさりとした単(ひとえ)に短い袴だけという、至って軽装でおいでの総帥様。大きな手のひらでがっつりと頑丈そうな顎の先を捉えたまんま、深々と考え込んでおりますという格好にて、思い出そうとなさっておいでで。そして、
「〜〜〜〜〜。」
 セナくんがついのこと、吹き出しそうになりかかったのを必死で堪えたのは、実は実は、一足先にこの株の由来のようなもの、お館様から聞いてあったからに他ならず。あれは追儺
ついなの儀の前日のことだったか、出先から戻られたお館様が雑仕に命じて、外から持ち帰った椿の株を植えさせておられ、
『ああ、これか。出先で見つけた。』
 綺麗なものだのなんて、あっさりと仰せだったのへ。でも、そんな風流なことへ関心を寄せるような方ではないのは、この荒れ放題の庭を見れば一目瞭然だったので。なのに、その日はとうとう一日中、その椿を見ては妙にニヤニヤ笑い続けてらしたのが気になって。じ〜〜〜〜っと見つめていると、どこかやわらかく苦笑をなさってからのこと。内緒だからなと教えて下さったのが…先の一大事のおまけのお話。あのお館様が何者かに呪われて、その生気を少しずつ奪われてしまったという、のっぴきならない事件があり、そんな途轍もない窮地にあったお館様を、黄泉平坂の途中から引っ張り戻して下さったのが…妙な縁があって知己になっていた、阿含さんという御方で。セナはまだ、どういう筋の人なのかまでは知らないものの、彼もまた何かしらの邪妖か精霊さんであるらしく、だからこそ すんでのところで呪いを突き返せた術もご存じで。そんな阿含さんに挨拶に(?)行かれたお館様、それにしても何でまたこちらの騒動をご存じだったのかと尋ねたところが、葉柱さんがワラにもすがるよなお気持ちで…あまり好いてはおいででなかった阿含さんへまでお声をかけられての顛末だったとか。そこで、そんな葉柱さんが奔走中に頭にくっつけていたという椿を見つけ、からかってやろうというお気持ち満々に引っこ抜いて持ち帰られた…とのことで。
“あれって、先月のお話なのに。”
 庭の結構目立つところ、濡れ縁からすぐの下手に植えられた椿の株は、元気に根付いてすくすくと、残りの蕾も順番に、長く咲き続けて…今に至るというのにね。全然気がついてらっしゃらなかった葉柱さんであられたらしく。
“でも、お館様の方でもそんなにも気に留めておいでではなかったようだしな。”
 何しろ、毎日にぎやかなお屋敷だから。家人たちの喧噪もあれば、持ち込まれる騒動もあり。禍々しき邪妖や呪いと相対すという深刻な事態もあれば、はた迷惑もはなはだしい痴話喧嘩に終始するよな日もあって。内裏なんてな退屈なところへ出仕する何倍も面白いと、お館様がなかなかお出掛けにならないのも分かるような気がするような、そんな屋敷であるからね。可憐な椿が健気に育つ様など、言ってみれば自然の成り行き、気づかなくとも忘れていてもそれはそれで仕方がない。
「…どっかで見たことがあるような気がするんだが。」
 ここにも雑多に色々と、沈丁花だの金木犀だの植わっているが、ここで見たんじゃなかったような。でも何だか、今朝方の暁光に照らされて遅い蕾が一輪咲いてたのが、妙に気になってしょうがなく。
「う〜ん…。」
 男臭くも頼もしい、鞣した革を張りつけたような首条へと、大きな手のひらを当てがって、お顔を顰めて唸ってらっしゃる。それがまた微妙に可笑しくてしようがないセナだったが、あからさまに笑いも出来ず。誤魔化すつもりで視線を逸らすと、広間の御簾の端っこが、ほんの僅かだけ上がっている。そこには白い手がちらりと覗いてて、あれれぇ? それってもしかして?
“…あ。”
 視線を真っ直ぐ、そちらへ向ければ、その白い手はゆっくりこっそり、人差し指を立てての“一つ”を示した。これってやっぱり“黙ってな”という“しー”なのかしら?
「ちびさん?」
「あああ、はい? どうかしましたか?」
 この頃では、お館様に倣ってセナを“ちびさん”と呼んで下さる優しい方。
「蛭魔から、何か聞いてはいないかの。」
 聞いてますとも。
(笑) でもでもこればっかりは、言えなくて。
「縁起の良い椿だと、そういえば仰有ってらしたような気が…。」
 適当なことを言い足せば、さっきの御簾が風もないのに柔らかに撓
たわんだのが見えたから。きっとその内側で、お腹を抱えて転がりながら、笑っておいでのお師様なのに違いなく。
「縁起の良い椿、ねぇ…。」
 やっぱり判らんと、とうとう匙をお投げになったか。大きな肩をはぁあと上下させた葉柱さんが見上げたお空には、上等の絽を張って透かしたような、少しほど淡い青が満ちており。今日も良い天気になりそうだと、告げているかのようでした。





            ◇



 当世の若い公達というと、出世の株は生まれながらの血統によって、既に大体割り振られているから、どんなに勤勉に頑張ったところで先は見えてる。そこでということなのか、それともあまりの爛熟安泰ぶりの、これも影響の一つということか。それこそが人生の重要なお勤めであるかのように、恋に遊びにと身を擦り減らしてまで奔走してもいたそうで。のちの武家社会に至ってもその風潮は改まらず、京の公家らは淫らにふしだらだと公の席でまで非難されたそうだのに、知らん顔して宮中の女官たちなどが浮名を流していたとかで。よって、貴族の大人どもは昼の日中は大人しいもの。もっぱら夜中がお遊びの本番なせいで、よほどに避けられぬ行事や出仕でもない限り、日が高くなるまで優雅に呑気にぐうぐうと寝て過ごす。
「闇に棲まう妖かしの者とどっちが怪しいんだかだよな。」
 物怖じしないで思うところをずばずばと口にするのは、昔から変わっていない陸くんであり。いくら此処が、彼の寝起きしている武者小路家のお屋敷の中の居室だからと言ったって、
「あわわ、そんなこと言うもんじゃないって。」
 誰に聞かれることやらと我がことのように慌ててしまうのが、こちらさんも相変わらずに及び腰のセナくんだったりし。構うもんかよ、これが厭味になるような奴らは、今時分は寝ているさ。それに、ウチのお館様や若師匠は、そんなだらけたお人じゃあないし、と。鼻高々になるところは、まだまだセナと同世代の幼さの現れかも。その陸くんから、
「まあ、セナんところのお師匠様の場合は、また別な“夜働き”をなさってらっしゃるのだろうけれど。」
「あやや…。/////////
 思わせ振りな言いようとともに、ちろりんと斜に構えた眼差しを向けられたのは。邪妖退治や邪霊封印、所謂“居るけど居ないことになってる”物の怪(もののけ)の退治という、荒技振るいまくりの実務仕事の数々へ、セナはまだまだ未熟だから、滅多に連れてってもらえてないって話を先日したからで。
「勿体ないよな。そんな実地の現場にしょっちゅう出向いておいでなのに、何で連れてって下さいって粘らない?」
「だって、さ。」
 それでなくとも夜中はすぐに眠くなるから苦手だし。それに、
“進さんもあまり良いお顔して下さらないし。”
 こちらさんは一重に、セナに危険な真似をさせたくないからのことらしく。それへと、
『あのな、進よ。』
 チビさんは先々で、邪妖を退治することも仕事としてこなす身となる。いざって時に“あわわ”と後込みばかりしていては話にならんだろうがと、時折お館様が意見して下さるのだが、
『そんな危ない生業になんぞ、関わる必要もなかろうよ。』
 大威張りで言い返す強腰な憑神様なもんだから。葉柱さんは苦しげに笑い出し、お館様は逆に苦々しいお顔になるばかり。
“…あ、進さんっていうのはね?”
 皆様、とっくにご存じですよ。つか、
「大方、あの進さんとかいう人が、過保護にもお前んこと庇いまくっていなさるんだろうけれど。」
「あわわ…。/////////
 実はこの陸くんと、当家の若師匠にだけは、外部の人だが…お館様から大まかなところは伝えられてもいて。お館様曰く、
『そこらの安っぽい邪霊と間違えられて、封印でもされたらどうするよ。』
 今時は似非っぽい導師ばっかだからある意味安心かも知れんがの、ここのお人たちは別格だ。よって、前以て言っといた方がいいんだよと。そうと仰せの割に、ご自分の式神である葉柱さんのことは、誰にも広めてらっしゃらず。不公平だなぁ。でも、ボクでは誤魔化し切れないのも確かだしなぁと、痛し痒しなところを実感していると、

  「そうそう。そういえば、桜の宮様に書を見てもらったんだって?」
  「え? あ、うん。」

 当世の帝の直系の宮様、東宮様と呼ばれるよりも桜の宮様という通り名の方で親しまれておいでの、それは麗しき顔容
かんばせの貴公子様に、お館様への親しさと同じほど、小さなセナくんも可愛がっていただいており、
「お前はお屋敷からあんまり出ないから気がつかないだろけど、結構知られてっぞ? そのうち、宮中へお稚児奉公にって出されんじゃないのかとか。」
「…何だよ、それ。」
 あっはっはと笑った陸くんには悪気はなかったみたいであり、ただ、
「そういう噂、小早川の宗家の人間も自慢げに広めてるんだけどもさ。あすこの、ほら、桧山坂下の分家の爺さん。あの人が妙に食いついてるらしくてな。」
「食いついてる?」
 ある意味、箱入りで育ちのいいセナくんには、今一つ専門用語が分かりにくかったらしいのだが。かっくりこと小首を傾げた乳兄弟さんへ、

  「こっからは冗談ごとじゃあない。
   いいか? 今頃はウチのお師匠様がお前んとこのお館様へも話してると思う。
   だから、宗家だって名乗ってあすこんチから何か言って来たら気をつけな。」

 いやに真摯なお顔になって、ついでに…おでことおでこがくっつきそうな至近から、こそりと囁いて来た陸くんだったので。

  「う、うん。」

 何だかよく分からないけれど、此処はひとまずと頷いたセナくん。まさかこの後、とんでもない騒動に巻き込まれようとは、努々
ゆめゆめ思わなかった彼だったりするのも、まま無理はあったりなかったりするのである。







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 *さあさ、何が起こるか春の鬼話でございます。